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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)646号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一原告らが、本件実用新案権を、各自二分の一の持分をもつて共有していること、本件実用新案の登録請求の範囲は別紙(一)(実用新案公報―省略―)の該当欄記載のとおりであること、被告が、現に、(イ)号物件の製造販売をしていること、(イ)号物件の構造は別紙(ニ)(目録―省略―)および別紙(イ)号図面―省略―の1ないし7に記載のとおりであり、かつ、大便器(A)小便器(B)および別紙(イ)号図面の5の装置の便槽(7)を除き、すべて合成樹脂材で構成されていることは、いずれも当事者間に争いがない。

二原告らは、イ号物件はいずれも本件実用新案の特徴を具えていると主張するので考える。

1 <証拠>を総合すると、つぎのような各事実を認めることができ、他にこの認定を左右する証拠はない。

イ、非水洗式便所の臭気を除去することを目的として、排便管と便器および排便管と便槽との取り付け方を本件実用新案のものと同様にした構造、すなわち、大便器の下部に本件考案の吸気筒と同一形状のものを設け、これを外方より囲んで、本件考案の集気器と同一形状のものを設け、その下部に本件考案の防臭曲管と同一形状のものを設けて、便槽内からの臭気の流出を防ぐとともに、右集気器状の部分に排気管を連絡して臭気を外部に排出しようとする構造および小便器より排尿管を通じて集気器に連絡する構造は、本件実用新案出願時より以前から、いわゆる「昭和便所」として公知であつたこと。

ロ、非水洗便所の蛆を除去することを目的として、種々の形態(その中には、本件考案のように縁部を薄肉とすることによつて蛆のはいがりを防ぐ構造のものもあつた。)の蛆返しを便所装置の各部に取り付けることも、本件実用新案出願時より以前から公知であつたこと。

ハ、本件実用新案出願当時、既に、合成樹脂資材で薄肉のものが存在したが、生産費が高くなるため、便所装置に使用されたことはなかつた。原告井上もまた、本件考案に際し、右の点を考慮して、合成樹脂以外の資材を使用し、その内外面に合成樹脂塗料を滲透させることにより、比較的安価で、かつ右合成樹脂材の特質を活用した便所装置を得られるよう考案したものであること。

ニ、本件実用新案公報には、資材の点につき、まず登録請求の範囲として、「合成樹脂塗料を内外面に滲透せしめて構成した」との文言が明記され、ついで実用新案の性質、作用および効果の要領として、「便所装置の各部分品は、硬質コンクリートで構成し、その内外面に合成樹脂塗料を滲透させてあるから、アンモニアによるコンクリート表面の腐蝕防止とともに、各管体の内面の摩擦抵抗を少くして、外部よりの地下水、雨水の滲透を防止することができるものである。」と記載されていること。

ホ、原告井上は、本件考案に際し、便所構造を主として土管あるいはコンクリートをもつて構成することを前提としていたが、右土管、コンクリートの先端を薄肉となし蛆返しの機能を発揮するよう構成することは、経費の面でも技術の面でも適当でないと考え、特定の構造を有する蛆返し器を別途に作成したうえ、これを所要部分に取り付けることを考案し、かつ、右蛆返し器の具体的形状についても、それぞれの取り付け個所に応じて、個別に(公報図面第2ないし第4図のように)考案したものであること。

ヘ、本件実用新案公報の登録請求の範囲に、蛆返しの点につき、「小便器2の下部に蛆返し器12を排尿管13には蛆返し器14を各々取り付け……連絡管9の先端にも蛆返し器8を取り付け」と明記され、実用新案の性質、作用および効果の要領欄に、被告主張のとおりの記載がなされているほか、図面第2図、第3図、第4図に、それぞれ取付けるべき各蛆返し器の具体的形状が明示されていること。

2、右認定の事実を考え合せると、本件実用新案の考案は合成樹脂以外の物質を資材とし、しかも無臭防血の作用効果を挙げる構造を課題とするものであり、登録請求の範囲にいう「蛆返し器」とは原告主張の蛆返しの機能を果すすべての構造のものを含むものではなく、小便器の下部には公報図面第2図、排尿管の先端には同第8図、連絡管の先端には同第4図にそれぞれ示す特定構造の蛆返し器を意味するものと解すべきである。

3、ところで、(イ)号物件は、大便器、小便器、別紙(イ)号図面の5の便所装置の便槽部分を除き、すべて合成樹脂材によつて構成せられており、本件実用新案の課題の外にあるものであるのみならず、本件実用新案の考案の必須要件の一である公報図面第2ないし4図に示す特定構造の蛆返し器は設けられていない。

4、従つて、(イ)号物件は、本件実用新案権の権利範囲に属さないものといわなければならない。

四、そうすると、その余の点について判断するまでもなく、原告らの本訴請求は失当であるから、これを棄却する。(大江健次郎 田倉整 丸山忠三)

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